7月の夏休みに入る頃に、毎年大きなお祭りがあって、その行事の一環で有名な花火大会が行われていた。僕が入院していた時に一度その花火大会の日があった。通常は消灯が7時という信じられない時間だったけれど、その日は多くの子ども達は看護婦さん達に連れられて病棟の屋上に出て花火を見た。
次々と花火が上がるのだけれど、随分遠くに離れているらしく、花火が見えてから音が聞こえるまでにかなりの時差があって、とても不思議な気分で見たのを思い出す。見えてから何秒経ったら音が聞こえるかをはかって、音は1秒間に360㍍(?)進むというので、360をかけておおよその距離を割り出して喜んだりしていた。
花火自身は、また花火大会の関係者は、この様に遠く離れた病院の屋上で入院中の子ども達が、ワイワイと騒ぎながら花火の一つ一つに声援を送って楽しんでいたことなどわからないだろうと思うけれど、確かに夏の一夜、自分たちの病気のことを忘れて楽しませてもらったことを思い出す。
僕は、現在も結構花火が好きで、見る度に“あの日”のことを思い出し、きっと様々な思いで遠くから近くからこの花火をながめている人がいるんだろうなあと、当たり前なんだけれど、思いつつ楽しませてもらっている。
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