入院中、病院内を動けるようになってから、僕はよく看護婦詰所を覗いたものだ。婦長さん以下、序列がとても厳しい組織であることが実感できて、それを封建的という習い覚えた言葉で表現して嫌がられたりもした。
夜中にもの凄い雷が鳴り続いて眠れなかったとき、巡回に来られた看護婦さんに連れられて詰め所に行き、かなりの時間をそこで過ごし、入院している仲間には内緒の、自分だけの特別な時間を過ごした気分になり、その時の看護婦さんとは特に親しくなった。
でもやっぱり夜の病院は好きになれなかったと思う。窓側の一部にあった狭い通路を使って看護婦さんには内緒で部屋を行き来したけれど、皆が寝静まってしまうとそれもできず、カーテンの隙間から入る街灯の明かりが天井にいろんな影絵を作るのをぼんやり眺めて眠り込むまでの時間を過ごすことが多かったと思う。
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