NHKの歴史秘話という番組で、長崎のグラバー邸の元所有者であり、トーマス・グラバーの息子、倉場富三郎のことを取り上げていた。イギリス人(スコットランド人)の父と日本人の母との間に生まれて、戦前と戦中を生き、敗戦直後に74歳で自ら命を絶ったという。長崎港で巨大戦艦武蔵が極秘の軍事機密として建造される際に、グラバー邸からよく見えるという理由で、こよなく愛した館を売却のうえ立ち退きさせられ、その後は失意の日々を過ごしたようである。戦時中はスパイを疑われ、同じ境遇を生きた妻ワカの死後はいっそう孤独な日々を過ごし、戦後間もなく亡くなっている。
大河ドラマを観るような、幸せな日々から失意の日々への転変と孤独な死、トーマス・B・グラバーの隣にお墓があり、故郷長崎の地に眠っている。
彼の晩年を想像する。…。その無念であったろう心境を想像する。
自分はいったいどの様な最後を迎えるだろうか。旧約聖書のヨブ記にあるように、結局誰でも一人で旅立って行くことになるという現実を受け入れるしかないのだけれど…。
でも、映画『火垂るの墓』の冒頭の場面にえがかれていた、三宮駅構内で死んでいった少年の無念さや、親やその連れ合いから虐待を受けて死んでいった子ども達のことを思うと、自分なんかはもうどの様な死に方も感謝して受け入れなければならない人生を生きてきたと思う。