26 野球のグローブ
テレビでField of Dreamsを観た。有名な映画で、断片的に各シーンを知ってはいたけれど、通してきちんと観たのは初めてだった。なるほどこういう物語だったのかと、心温まる映画だった。
そしてまた僕は50年以上前のことを思い出した。当時僕は野球大好き少年だった。暇さえあれば、空き地や、稲刈り後の田んぼで、三角ベースの野球に没頭していた。今と違って、バットもグローブもろくな製品ではなくて、グローブは特にひどいものだった。映画の中に出てくる選手達も同じようなグローブを使っていた。
僕は怪我をする少し前に、年齢が20歳以上も離れていた上の兄に、グローブを買ってもらった。これがうれしくてうれしくて、グローブの皮のために「油」を塗って、また自分の左手に馴染ませようと、毎日手入れを欠かさなかった。あの感触と、あの独特の皮の臭いと、あのこげ茶の色合いを今でも思い描くことが出来る。
怪我をした日も、僕はそのグローブを持って登校していたと思う。入院してから随分時間が経って、「あのグローブはどこへいったのだろう」と突然思い出し、探してもらったけれど結局出てこなかった。以来二度とそのグローブを使って野球をすることはなかったけれど、時々ふと「どうしたかなあ」と思い出す。
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