27 目撃
最初の病院で、動くことができるようになると、僕は病院の中をくまなく探検した。そんな時に、入院中のあるお兄さんと親しくなって、彼(20代の人?)とよくおしゃべりをした。何をしゃべっていたのか定かではないが、とにかく彼と過ごす時間が多かったように思う。後で転院した病院のように管理がきちんとされていなかったので時間をかまわず自由に行動できたことや、小児科病棟でもなかったので、子どもの入院患者はあまりいなかったのではないかと思う。
ある時、いつものように彼が入院している2階の病室をフラリと訪ねて、ドアを開けたら、彼は若い女性と一緒にベッドに入っていて! 僕を見てびっくりして起き上がろうとしたら、二人とも少なくとも見える範囲は裸だったので、僕もびっくりして外へ出てドアを閉じた。…個室ではなかったけれど、ベッドは結構空いていて、ほとんど個室のようになっていた…、何か見てはならないものを見てしまったという罰の悪い感覚で、自分の部屋のある1階へ戻った。すぐに彼がやって来て、何と言ったか覚えていないが、その場面だけはいまでも記憶に鮮明に残っている。
小児科病棟に移ってからは、子ども達ばかりの世界だったけれど、中学生のお兄さんやお姉さん達は、僕たちギャングエイジのガキンチョとは異なる世界を作っていた。特に僕の育った農村部とは違って、病院のある大都会育ちの彼らは僕らの想像を遙かに超えて大人びていた。何度か、彼らの抱き合う場面やキスシーンを目撃して、仲間達で噂をし合ったけれど、冷やかしたりすることは出来なかった。映画とかではなくて、生の人間のその様な場面を目撃したことは、思春期の入り口にあった僕たちにはとても刺激的で、忘れられない映像として記憶に残されている。
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