黄金旅風 飯島和一
このたび飯島和一の本を全て読んだ。前に途中まで読んで放置していた『黄金旅風』を改めて読んだ。本当は、『出星前夜』の前に読むべき本だった。『黄金旅風』の続編が『出星前夜』だったとつくづく思う。
小説であれば、主人公や主人公に近い登場人物の危機的な場面には、きっと正義の味方が現れて危機が回避されるのだけれど、この本は、そのような場面でも登場人物が淡々といのちを落としていく。読む途中に、呆然と“立ち止まって”しまわざるを得ないことが何度かあった。歴史小説の歴史小説たる所以だろう。どこまでがノンフィクションで、どこからがフィクションなのか、本当に判然としないが、筆者のディテールの描写力に驚嘆させられる場面が続く。
将軍家光が登場する時代の長崎の空気がとてもリアルに伝わってきた。彼らのキリスト教信仰がどの様なもので、権力者がそれをどの様に利用したのか、「なるほど」と思わせられる「たいした小説」だと思う。
さて、飯島和一の次の作品が待ち遠しい。また3年か4年、待ち続ける日が続きそうだ。それまで自分は生きているだろうか。
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