無実であったにも関わらず、DNA鑑定を根拠にして無期懲役の判決が確定し、17年以上にわたって収監された菅谷利和さんが、再びDNA鑑定によって釈放され、無罪を前提にした再審が決定した。
何ということだろう! 45歳の頃から62歳まで、人生の最も充実していたであろう時期を、身に覚えのない「罪」によって刑務所で過ごさざるを得なかった菅谷さん。その心情を思うと、あまりにも理不尽で表現する言葉もない。
1998年に出版された『魔力DNA鑑定 足利市養女誘拐殺人事件』(佐久間哲著 三一書房)を読むと、既に当時の「DNA鑑定」の精度の不確かさが取り上げられており、再鑑定の必要が訴えられている。にもかかわらず、それからさらに10年以上が経過していることにこの国の犯罪捜査機関と司法機関に病理的側面が存在することを認めざるを得ない。他に様々な合理的疑問が存在するにも関わらず、DNA鑑定という「科学的」根拠によって、一切を否定してしまう、正に「魔力」という言葉に相応しい病理がそこにはあった。また、捜査を担当した地元警察の次元の違う焦りが、軽い知的障害があると言われた菅谷さんを人質にして「犯人をでっち上げた」と言われても仕方のない「強引さ」「無茶苦茶さ」が浮き彫りになり、戦慄させられる。
当時のこの鑑定によって有罪が確定した全ての事件について、詳細な再審理をすべきである。第二第三の菅谷さんを是非救出してもらいたいものである。ひょっとして既に死刑が執行されてしまった人もいるかも知れない等と聞かされると、それは、「国家による犯罪」以外のなにものでもないと言わざるを得ないだろう。
つづく
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