☆ 先週火曜日に僕は朝から夕方まで認知症高齢者のそばで過ごす機会を得た。最初に法人理事長から、この事業にこめた熱い思いを聴かせてもらい、午前中は9人の方が暮らすグループホームで、午後は15人の方が通うデイ・サービスの場で、「利用者の身になってその場に居る」ことを求められて、「話しかけたりしない」ことを条件に時間を過ごした。好奇心を一杯に観察をさせてもらうしかなく、沈黙の1日を過ごすことは結構きつくてしんどい時間であった。厳しい経営環境の中でも、理想を追求しようとされている理事長以下の職員の方々の意気込みは相当なもので、一丸となって取り組んでおられる実践に敬服させられた。
☆ 一方、認知症の利用者の方々の症状の出方は様々で、言葉が多く出る人やほとんど言葉のない人、とても居丈高で他の利用者に命令口調で話す人、ずっと笑顔の人とずっと渋面を作っている人、ブツブツと独り言を言い続ける人、立ったり座ったりを繰り返す人や、2,3分おきにトイレに行く人、今日の帰りは何時かと際限なく職員に質問を続ける人、ボーッとした状態の人も居れば、僕に対して猜疑的な視線を投げかけて来る人、この様な症状の出る以前の生活の状況や性格特性がどの様な状況であったのかとても気になった。
☆ 多くの方がいわゆる「後期高齢者」と言われる年齢の方々のようであったが、中に僕とほとんど年齢が違わないのではないかと思われる人もおられた。じっとそこにいて、自分自身はこれから先どの様になっていくのだろうか、どのタイプの人間になるのだろうかと不安にもなった。
☆ この方々が突然しっかりとして皆で大きな声を出されたのは、外部のボランティアの方が来られてピアノ伴奏で懐メロを歌ったときであった。皆に配布された歌集を見ながら皆さん大きな声で、「青い山脈」や「故郷」やとてもポピュラーな歌を次々と歌っておられた。ボーとした状態だった人も、立ったり座ったりしていた人も、皆さん配布された歌集を見ながら大きな声で歌っておられた。これには驚いた。歌とそれにまつわる様々な思い出が皆さんの脳を活性化させるのか、回想法という療法があるらしいが、歌には大きな効果があるように思えた。僕の年代が80歳代になる頃にのデイサービスの場では、皆でフォークソングを歌っているのかも知れない。
☆ 不思議な1日の体験を終えて、グッタリと疲れてしまった。