小桜インコのことは、既に書いたように思うのだけれど、最近、とみに物忘れが多く、もう読んだと思われたら飛ばしてほしい。
嘘みたいな話しだが、…やっぱり既に書いたように思うけれど…、入院中に病室の窓に赤や緑の綺麗な羽根におおわれたインコが飛来した。開け放たれた窓のレールの部分にとまって、しきりに首をかしげて僕の方を見ている。すぐに看護婦さんが、どこからか古い鳥かごを探してきてくれて、インコの前に持っていくと、まるで自分の家に入るように、ピョンピョンと篭の中へ入ってくれた。
彼(彼女?)とはそれから長い付き合いだった。退院後も我が家にやってきて、玄関に置いておくと、家人以外の人が来るとけたたましくキーキーと鳴いて、番犬の様な役割を果たしてくれた。よく篭から出して飛び回っていたけれど、また篭に自分から入るという具合で、実に仲良く暮らすことが出来た。どこから飛んできたのか解らないけれど、前の飼い主はきっと残念がっていたのではないかと思う。
彼(彼女)は、小桜インコがよくやるらしい習性があった。くちばしで新聞紙を細長く切って、それを身体に突き刺して「遊ぶ」のである。とにかく、新聞紙や広告の紙をしょっちゅう短冊状にして、身体につけていることが多かった。
とても好奇心が旺盛で、色んな珍しいものをつついてみる習性もあった。僕の言うことが大体理解できているのではないかと思えるほど利口な鳥だった。
この好奇心が彼(彼女)の寿命を縮めた様に思う。ある晩、けたたましく鳴くので、灯りをつけて見ると、クチバシが傷ついていて、篭の中で苦しんでいた。夜が明けて獣医に診せたが口が開かない状態を治すことが出来ず、何日もせずに一気に衰弱して亡くなってしまった。その時、僕は中学生だったけれど、かなりの期間立ち直れなかった!
我が家は、田舎の家で、天井裏やあちこちにネズミが住んでいた。夜中に彼らは活動し、多分鳥かごの中のインコに外側からちょっかいを出し、内側の彼(彼女)も好奇心いっぱいに篭の隙間から(いつも僕と篭をはさんで遊んでいた)ネズミのちょっかいに応じていて、クチバシを噛まれたのではないかと思われた。 本当に可哀想なことをしてしまった。庭にお墓を作って埋葬した。
小児科病棟の5階の窓に突然飛んできてくれて、入院中に僕を慰め、退院後も毎日のようにお互いにちょっかいを出し合って交流してきた彼(彼女)、本当に今思っても悲しい気分になる。ペットショップやデパートの小鳥の売り場の前をを通ると、つい小桜インコはいるかなあと探してしまう。
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