自殺未遂のおばさん
僕が小児病棟へ転院する前の約3ヶ月弱、怪我をした直後から学校から連れて行かれた個人病院で入院生活を送った。怪我をした直後の意識が混濁していて寝たきり状態だった時から、病院内を歩き回れるようになった時期まで、この病院では、様々なびっくり体験をさせられた。
ある日、僕がまだ寝たきりの時に、衝立で仕切られた隣のベッドに意識不明のおばさんが運び込まれてきた。僕の母親がヒソヒソと僕に語ったことによると、薬を飲んで自殺すべく河に入ったけれども、誰かに助けられたらしいということだった。
そのおばさんの夫と、夫の母親と思われる女性と、子どもがやって来て、ベッドのそばで意識が戻るのを待っていた。そうこうする内、おばさん(今考えると30歳前後の若さだったのではないかと思われる)の意識が回復し、自分が救助されて病院のベッドに寝かされていることに気付き、そこから大騒ぎが始まった。
「どうして助けたのか!」「あのまま死にたかったのに!」「何で病院なんかに連れて来たんだ!」とわめき散らし、手当たり次第モノにあたるため、 間の衝立が何度も僕のベッドの方へ倒れかかってきた。夫の声はほとんど聞こえず、夫の母親が「応戦」していた。いわゆる「マザコン」亭主のようで、僕の母が病院に言って、病室を移動してもらった。子どもの僕には聞かせたくない内容だったようである。
後に僕は離婚調停事件などに関わる仕事に就いたけれど、あの時の様子がたびたび思い出さされた。命を助けても喜ばれないことがあるのだと初めて知った。
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