『追われゆく坑夫たち』
上野英信著『追われゆく坑夫たち』(岩波新書)は、若かった僕には衝撃的な書物だった。人の世の理不尽さをこれほど骨身にしみ入る様に感じさせられた本はない。1960年代の出版だったと思うけれど、10代後半の多感な時期に読んだこの本は、そのディテールを明確に覚えてはいないけれど、僕にかなりの衝撃を与えたのは事実である。
これを読んで10年以上経過して、僕は縁あって突然筑豊に住む機会を得た。7年間という短い期間だったけれど、筑豊で暮らす多くの人達に支えられて思い出多い時を過ごす事が出来た。
細かい記憶に裏打ちされた山本作兵衛の「炭坑素朴画」や、土門拳の写真集『筑豊の子どもたち』と共に、上野英信のこの小さな著作は間違いなく自分に大きな影響を与えた一冊だったと思う。ずっと後になって『写真万葉録筑豊』というシリーズを買い求めたのは、上野英信氏の仕事なら間違いないと思ったからである。
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