やっと、約1ヶ月もかかって、『出星前夜』を読み終えた。どこまでが史実でどこからが創作なのか、歴史に疎い自分には定かには判らないが、本当に重厚なずっしりと重い541頁だった。破滅への道のりを細部にわたって緻密に描く手法は、舌を巻くというか、ただただ敬服させられる。 ストーリーの展開は、どこか高橋和巳の小説…そう、破滅へ向かう小説と空気が似通っているように思われた。 僕なんかがほんのチラリと知っているに過ぎない島原の乱の社会的背景が、本当はこの様なものだったのかと、納得させられる内容だった。
登場人物:寿安、鬼塚監物、外崎恵舟、ジェロニモ四郎等々の人物像が、一人一人クッキリと描かれていて、部分部分でそれぞれの心情に共感することも多く、読み終えると肩から力が抜けていく…とうか…、あるいは、心に漠然とした引っかかりを残す内容だった。
人生の途上で直面する危機的な場面で、どの様な決断をするか、それによって以降の人生が大きく変わる人生の分岐点で、迷いつつも一つの決断をし、その後はうしろを振り返らずに突き進んでいくという鬼塚監物。一方で、意図しない転機に身を委ね、それによって予想もしなかった人生が展開されていくという寿安。 自分が40年前の青年期にこれを読んでいたら、いったいどの様な感慨にふけっただろうか…。
天草と島原半島、いつか近いうちに訪ねてみたいと思う。
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