『マン・オン・ワイヤー』という映画を観た。仕事を沢山し残しながら、現実逃避のひと時を映画館で過ごした。また人に迷惑をかける。
僕は前にも書いたけれど、「奇妙な人」が結構気になる。この映画の主もずっと気になっていた。今週いっぱいで上映が終わるというので観に行ってしまった。
各地の有名な建築物にロープを張って、安全ネットなしで綱渡りをするフランスの大道芸人である主人公が(ドキュメンタリーなので、主人公とは言わないのかもしれないが)、まだ出来て間もないニューヨークの世界貿易センタービルの二つのタワーに綱を張って、その上を渡るまでのドキュメンタリー映画である。当時世界一の高さのビルで、411メートルもある(あった)という。この二つのビルに誰にも気付かれないようにロープを張るというのは大変なことで、様々な協力者を得て、綿密な作戦を立てて、必要な大量の資材を他人に気づかれないように運び込む、再現ドラマと当時のフィルムや写真を使って見せられるディテールは緊迫感があり、感動できた。多くの当時の関係者の証言も、気持ちがこもっていて、胸が熱くなる場面もあった。
411メートルを下から見上げるアングルは平気だが、上から見るアングルには劇場にいながら足がすくむ。結局彼は、中央部分で座ったり寝転んだりしながら、45分間に8往復して警察に逮捕され、協力した人たちは国外追放されたという。
僕はこれまで生きてきて、「命をかける」ほどのチャレンジをしたことはない。石橋を叩いてもなかなか渡れない勇気のないタイプの人間だと思う。そんな中、命がけで何かに挑む人たちには頭が下がる。大道芸人の彼にも畏敬の念さえ抱かされる。冒険家で命を落とした人は沢山いるけれど、大道芸人の彼には冒険家のような悲壮感は見られない。楽しげにしかし次々とチャレンジする彼の生き方に、心惹かれる。
前に書いたと思うけれど、『最後の冒険家』よりもはるかに魅力的に思えてしまう。
ところで、お客はちょうど20人だった。立派な映画館に20人のお客! 8月に契約切れで閉館になるそうだ。
映画を観終わったら、仕事をためている自分の現実がある(*_*)
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