風がかなり強く吹いて、めずらしく星のまたたきも見える夜、ベランダから夜の風景を眺めるだけでなく、ゴミ出しのついでに自分の住んでいるアパートの周りを散歩してみた。人通りもほとんどなく、居酒屋とラーメン屋には何人かのお客の姿が見えたけれど、いたって静かな夜の街だった。府中街道に出ると大きなトラックやタクシーが走っていたけれど、昼間のそれとは比べものにならないくらい数も少なく、でもトラックの音だけはすごく響いて、交番の明かりは妙にわびしく思われた。自分の住むアパートをあらためてまじまじと見上げてみた。今まで見たことのない角度で、近くのアパートの敷地に入ってそこから眺めると全然違う建物のように感じられて「そうか、ここからはこんな風にみえるのか!」と不思議な感慨に一瞬浸ったりした。
たまには散歩も良いものだと思う。でも変な時間にブラブラして怪しまれたら困るのでほどほどにしようと思うけれど…。…僕がはじめて海外旅行をしたのは42歳の時で、1989年3月の東ドイツだった。夜遅く東ベルリンの街についた時、この街は全体が美術館か博物館かと思われるほど各建物がライトアップされていて、きれいで静かだったという印象がある。当時の東ドイツの人たちは特に用事でもなくブラブラと街を歩き、多くの人が散歩を楽しんでいた。僕らもブラブラ歩いて、ソーセージとビールを買って街路に並べられたテーブルと椅子を使って一杯やりながら、行きかう人たちをぼんやりと眺めて至福の時を過ごした。
そういえば昔、京都の平安神宮の近くを、現在は某大学の教授をしている先輩と二人で、夜中にビール瓶を持って歩いていたら警察官に職務質問されて、下賀茂警察署(川端警察?だったかも?)までパトカーに乗せられて連れて行かれたことがあった!(>_<) 南禅寺近くの友人の下宿で皆で飲み会をやって、その後その先輩の家に泊めてもらうことになって、二人で岡崎の疎水端を歩いていたら、道路工事かなんかのために資材が積み上げてあって、そこに工事に使うためと思われる砂の山がいくつかあって、その山の一つにビール瓶が置いて(落ちて?)あった。何でこんな所にビール瓶がと思って拾い上げたら、まだ栓を開けていない本物の大ビンのビールだった。これを持って、一杯機嫌で歩いていたら職務質問されたわけである。多分時間は夜中の一時頃だったか、不審人物と思われても仕方のない状況だったと思うが、身分証明書を見せろとか言われたと思うけれど、酔った勢いもあって「何故見せないといけないのか!」等と言ったようで、警察官が笛を吹くと何人もの警察官が集まって来て、近くにこんなに警察官がいることにびっくりさせられたし、仕方なしに警察署まで同行させられた次第。結局怪しい者ではなく、本当にビール瓶である(警察官は、当初、火炎瓶か何かと疑ったらしい!)ことがわかり、拾得物の届を書かされ、「持ち主が現れなければ、6ヶ月後にこのビールはあなたの物になります」と言われて、夜中の街へ再び放り出された。
ちなみに6ヶ月後に京都府警からハガキが届き、持ち主が現れなかったのでビール瓶は貴方のものになるので、このハガキと印鑑を持って取りに来るようにと書いてあったが、気の抜けたビールをわざわざもらいに行くのも馬鹿らしく、あの警察署にもう一度行く気にもなれず、所有権を放棄させていただいた。
さて、梅雨が明けたと気象台が宣言し、真夏のような日差しが昨日今日と照りつけて、でもこの11階の家は、玄関を開けると家じゅうのものが吹き飛ばされるのではないかと思われるくらい、風が強く吹き抜けている。夜風を受けながらの無目的の街歩きから、昔のことを思い出して、不思議なひと時だった。
コメント