前にも触れたかも知れないけれど、入院中の子ども達の中にはいくつかの序列があったと思う。
一つは年齢による序列で、中学3年生から3歳の幼児までいたので、やはり中学生達は僕たち小学生から見ると大人のように見えたもので、年齢による序列は確かにあったと思う。 集会室などで、中学生のカップルが話し込んでいるのを見ると、僕らは近づけなかった。
二つ目の序列は、病状によるもので、病気の重い人ほど一目置かれていた。急性腎炎や盲腸などで入院している子ども達は、いくら年齢が上であってもひっそりと静かに暮らしていた。(もっとも、この子らは慣れた頃に退院していったのだけれど…。) 当時の僕の居た小児科病棟では、やはりネフローゼの子らが最も発言力があったと思う。2年、3年と長期にわたって入院していて、病棟が生活の場になっていたし、何かの拍子にあっけなく亡くなったりしたので、皆、彼らに「畏敬の念」を持って生活していたと思う。 病院の外での人間に対する評価基準とは全く異なる基準の中に僕たちは居たように思う。
看護師(当時は看護婦)さん達の序列はもっとシビアなもので、婦長さん以下、准看護婦さんや実習生まで、上下関係が非常にはっきりしていた。 「封建制度」という言葉を、看護婦さん達の世界を表現するのに子ども達の間で使ったりした。 この序列に医師の集団が居て、部長回診の日は大変なもので、主治医や婦長さん始め、ゾロゾロとスタッフが後を付いて各病室を廻ってきた。 小児科医はとても優しくて面白い人が多かったように思うが、整形外科医は全体として面白い人などはいなかったと思う。