6月に2度目の手術をした。1度目の手術は、怪我をして直ぐに連れて行かれた病院で受けた手術で、意識を失っていた私にはその最中や前後の記憶は何も残っていない。この2度目の手術はとても鮮明に覚えている。
手術をするための準備が色々あって、特に何か入眠剤か何かを処方されて、眠ることを求められたようだが、ウトウトすると「○○君」と声を掛けられて、「はい」と返事をして覚醒するということを何度か繰り返して、医者があきらめてそのまま手術室に入った。左の首に近い肩口に「ズーン」と響くような、左腕の局部麻酔注射を打たれて、目隠しをして、右腕には輸血のための針が刺さっていて、輸血をしながらの手術だった。病棟の看護師がずっと僕の右側に座っていて、僕の右手を握って励ましつつ手術は行われた。
鑿とか木槌とか鋸とか、大工道具のようなものを使って、僕の左腕の骨の中に巣くっている病巣を「削り出す」?作業が続けられた。その痛みは尋常ではなく、使われた麻酔剤は、筋肉や脂肪部分を切り裂くときには有効だが、骨を削ったり骨髄を「掻き出す」?際にはあまり有効ではないようで、激痛に堪え忍ぶ時間であった。
F整形外科部長さんが全体の指揮を執り、僕の主治医H医師が執刀医だった。もう一人の成人男性が隣で手術を受けていて、この「おじさん」も痛みに耐えかねてたびたび苦痛の声を上げていた。F部長が「隣で小学生が頑張っているんだから、あなたももう少し我慢しなさい!」等と叱咤激励していた。付き添ってくれている看護師が僕の右手を握って、絶えず励ましてくれ、夜中の12時をこえてやっと手術は終わった。
手術室の外には家族が待ってくれていた。そのまま長い廊下をストレッチャーで寝たままで移動し、廊下の天井の「模様」や「シミ」がどんどん通り過ぎるのが印象に残っている。
エレベーターで5階の病棟へ着くと、ドアのすぐ外に中学生の子らが、こんな時間にも関わらず待ってくれていて、僕をのぞき込んで、「よう頑張ったなあ!」「大丈夫か!」等々と口々に声を掛けてくれた。それまで健気に頑張っていた少年も、突然涙があふれ出した! 普段は消灯時間後はベッドで過ごすことを厳しく求めている当直の看護師さん達も大目に見てくれていたようだ。
少年にとっては大変な手術だったが、医療スタッフの労働も半端じゃなく、家族はもちろん病棟仲間にも見守られて2度目の手術は「成功」した。手術後の回復期はまた痛みとの戦いだったが、これは時間と共に徐々に緩和されていった。